鼠色のA/白雨
 
多湿な天井から
何度でも繰り返す声
A A A
その質量が天井を弛ませて
僕の耳元へ信号する
A A A
箱型の鼠色の機械の
艶やかな肌が
僕の超音波の恋愛とおなじだ
何度でも言う
この滑り出すなめらかな速度は、
―やさしく無音に喋りかける
空気だけを拾った録音は、
すっかり高揚した
僕の偏愛する魂なのだ
だから
天井からはAの音だけがけたたましく騒音し
僕は幾度となく繰り返す
Aの核よ、
音声の精神性よ、
その円心を日光のなかへ曝せ!
Aの反復性
それは近接か 離反か
だから内側へ向かって耳を澄ますのだ すると
ずっとグロテスクなAが
その?鐵の心臓を微笑みを持って差出し
剥奪された恋愛が
僕を夢幻の計測から解放して
食器を手に持ったまま
瓦礫の中に佇立する
 

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