交響曲傾聴/白雨
こめる
不思議な響き
チャイコフスキーが
そっと暗闇の樹皮を撫でた
彼はどうしても生み出さねばならぬ
生きた魚が
奥深く沈んでゆく
深夜の深海
泳ぐことの
本質を知るべきだ
オペラ 生クリーム
モーツァルト
銀のスプーンでかき混ぜて笑みを漏らす
のはほんの浅い眠りに過ぎない
ずっと高貴なものに憧れる
のを尻目にして突進する犀の、
この犀の構造を
知るべきだ
圧力と脱力の力加減
に向かっていかねばならぬ
優美な眠り
に脂いろのシロップを
かけねばならぬ
それを忘れないこと
ながいこと弦に一点の緊張を与える
チェリストの
指の犠牲精神は尊く
また儚く
覚醒とは、深く眠ることと同じだ
ただ優美なだけの眠りは
まるっこい指を
つくりだす
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