雨を想う/白雨
 
ずっとずっとずっとずっと
雨を眺めている
空は骰子のように
晴れたり曇ったりするので
今日は詩聖が天の箱を揺さぶって
数えきれぬペン先を地上に刺したのだ
天空には
恐るべき数の鋭利なる矢が
インクに濡れるのを待っている
男は元町に転がって
酒を飲みタタミイワシを焼き
帰りを待つ女が
あきらめてテレビを見だす
こうして100年に一度のカリグラフの嵐が
シロップのように地上を覆って
不甲斐なく堆積するのだ
この粘性にまとわりついた雨
アンニュイの雨
それはあの夏の積乱雲の惑わしそっくりだ
子供が産まれてろくなことになったことはない
出来の悪い子供は親に似て

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