僥倖/草野春心
 


  夢の隙間から、その日
  僥倖のような光が差しこんでいた
  雨と埃の匂いを嗅ぎながら私たちは抱きしめあった
  目を閉じたまま、腕がしびれてしまうまで……
  その日、私は女だった
  あるいはその日、私は男だった
  夢の隙間からこぼれるものたちを私たちは見ない
  よごれた海馬がいくつか、床に投げ捨てられていた朝



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