もうひとりの私はゼラチン質のようだ/
灰泥軽茶
列車の暖かいシートに座ると
向こう側のガラスの奥には
半透明な私が少し微笑んでいて
疲れて座っている
暗闇にうっすらと光り浮いている私は
ゼラチン質のように柔らかで他人のようだ
眼を離した隙にどこかに逃げてしまい
街中で逢っても気がつかないような
あやふやさに
私は生きていることを実感する
そして目を閉じれば暖かいシートに
ゆっくりぬくぬくと沈んでいくのだ
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