「血と路」/宇野康平
騒音の大通りを横切る度、頭痛がし
いつも「アノ」声が聞こえる
オオオオオオオオオオオオオオ
オオオオオオオオオオオオオオ
オオオオオオオオオオオオオオ
いつも低い、低い、男の声。どうや
ら、片足が無くなるようなひどい怪
我をして仲間から見放された兵士の
声のようだ。
その声に私が応えようとすると、
ホホホホホホホホホホホホホホ
ホホホホホホホホホホホホホホ
ホホホホホホホホホホホホホホ
と、女の声に変わる。どうやら、3
0手前で男に見放されて頭おかしく
なった女の声のようだ。
「アノ」声に応えるのを諦めて、
私は急ぎ足で、「アノ」声を踏みつ
ぶすようにして、帰った。
《劣の足掻きより:http://mi-ni-ma-lism.seesaa.net/》
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