夢/まーつん
 
夢には
二種類あるみたいだ

現実から
逃げるための夢と
現実を、変えていく夢

僕は、
炬燵の中で微睡む
飼い猫のクロと一緒に

彼女はもう
十年以上も前に
亡くなったのだけれど

その思い出は、まだ
記憶の中に生きていて
僕は時折、彼女の亡霊と共に
一日を楽しく、切なく過ごすのだ

痩せた黒い四肢
足の先は白い毛並みで
喉元から腹にかけても
雪のように明るい帯が流れる

そして、琥珀色の瞳を
薄暗い廊下や、押し入れの影に輝かせて
僕の方を物問いたげに見つめてくる

生涯、異性を知らずに終わっ
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