誰に教わらずとも/ただのみきや
 
ある日 生まれて来て
わたしは泣いた
そして何かのきっかけで
わたしは笑うようになった
誰に教わることもなく

やがて
何かのきっかけで
わたしは少女と出会い
恋をしたのだ
誰に教わることもなく

始めから備わっていたものが
あるとき目を覚ます
何かが(誰かが)呼び水となって

四六時中冷たい雨を纏い
薄闇と凌ぎ合う黒い背鰭のような稜線に暮れ果て
飢(かつ)えている――心の固い結び目を解けずに
その始まりは 何だったのか

ある日 何かのきっかけで
目を覚ます わたしの死
たとえ霧に覆われても
朝の訪れを待つ鳥の眼差し
誰に教わることもなく

  
  《誰に教わらずとも:2013年12月11日》







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