冬ごもり/八布
掃除を終えた綺麗な部屋に
いっぱいの日差しが入ってくる
本棚の背表紙もそろえたし
机にだって塵ひとつない
今のこの部屋には
神さまだって住めるけれど
そうするわけにもいかないし
背もたれによりかかって伸びをする
燃え尽きたお線香の
いい匂いだけがまだ残っている
十二月は窓の外で
明日を追いかけてる
ぴかぴかの机の上で
うつらうつらと舟を漕げば
雲ひとつない冬空に
魂が吸い込まれていく
のどかな休日の一日
ふと 生まれ変わりを信じそうになる
あの人がもし帰ってきたら
子どもに戻って
ひらがなことばでおしゃべりしたい
あやとりを掬い取るような
他愛ないやりとりをしてみたい
そんなことを思いながら
もう一度眠りについた
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