ひとつ まばたき/木立 悟
 




丘を下りる 隠者の音楽
川に浸かる 色の指
まばゆく細い
月の虹彩


ここに在るものは
ここに無いもの
夜は語り
夜は刻む


登るたびに
ちらつく光
さらに さらに
遠のく坂道


白夜の終わり
影のない街
足跡だけの
誰もいない街


蒼から藍へ
月は沈み
言葉はこがね
言葉はみどり


遠く二重の
夜の満ち欠け
まばたきをひたす
響きの満ち干


奇数の星を聴いている
数ではないものを数えている
何も無いものに満たされて
はざまははざまに微笑みかける


祈りをひとつ 置いては隠れ
不可思議はただ 不可思議を喰い
誰のものかわからぬ声が
夜の原を梳いてゆく





























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