錬金術師1と2/bookofheaven
錬金術師1
錬金術師にならなければ
水をつくらなければ
渇いてしまう
飢えてしまう
錬金術師になって
美しいものをつくらなければ
欠けたからだのあちこちを繕わなければ
いつのまにか空いたろうか
でこぼこと穴などが体中にできていて
もはや乾いてぽろぽろと崩れている
埋めなければ
繕わなければ
錬金術師であったころを
思い出さなければ
水をつくらなければ
水というものを思い出さなければ
顔に空いたふたつの穴に
泪を取り戻さなければ
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錬金術師2
バスのなかで席を立たなくなった
ささやく子供のこらえきれない愛らしい笑い声から 耳をふさぐ
いつからこんなに渇いていたのか
水すらも どんなものか忘れたかのよう
かつて私は錬金術師のように
この身ひとつで 水を生み出していたというのに
もはやどんなものが水であるかも不明瞭になり
今はこの身を削るように なにかを生み出している
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