冬の初めのごく小さな事/くみ
 
か?
正直、常に新しい物を取り入れたり変化を求める事は結構面倒でしんどい事だと社会人になってから思うようになった。

古本屋では恋人が恐ろしく高価で表紙の文字から察するにいかにも戦前に発行された植物図鑑の前から動かない。そんな事に「あれ、植物図鑑は3冊までって約束じゃなかった?」と小言を言う自分。

俺も俺で食料品店で意味もなく余分な食材を籠に入れようとして「ねぇ?お肉断ちはどうしたんだっけ?」と俺の下の名前をちゃん付けした上に意地悪そうに綺麗な顔で微笑む恋人が居た。

12月に入り、冬の初めの洗礼かのようにとても風が冷たい寒い日だったけれど、手を繋ぎながら耳から脳内に伝わる大好きな恋人の声が俺の冷えた身体を温める。
その声は、どこか頼りなさげで可愛いだけの声から、ほんの僅かに大人っぽい感じがしたと気付いたのはまだ俺だけだと信じたい。

あったじゃないか、小さな変化が。
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