男と女/番田
僕には彼女がいなかった
今日電車で
後ろに立っている女の人の鼓動を感じた
僕の背中で
そんな短い瞬間が少しだけうれしい
こんな寒い冬なのだから
この間は
ある人のコンサートで
隣に座っていた小さな女の子が
その身を寄せてきたから
思い出すたびにそのことが少しだけ
うれしかった
普段は寂しい仕事に従事している
感情をなくした人たちと
人間がロボットになりえるかという
悲しい人体実験を行っていて
僕も進んで協力している
抱きしめられた時
女の子はどんな気分になるのだろう
あまり良い気分ではないだろう
だって一定の距離が
男と女には必要だと知っているから
そんなことをひとりで思いながら
万世橋を渡っていく夜
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