被害/葉leaf
冬の初め、リンゴの収穫の合間に、友人の車に乗って文化センターの展示を見に行こうとした。時候の挨拶のような何気ない会話をしているうちに、車が急に左に寄って、コンクリートの壁に斜めにぶつかっていった。あっという間に車の左前の部位が破損しカバーやライトが飛び散っていき、こちら向きの壁の端にぶつかって大きな衝撃が訪れた。プラスチックの融ける化学的な甘いにおいが鼻の奥にこびりつき、カーステレオからは音楽が鳴り続けていた。私のメガネのフレームは変形し、胸に軽度の打撲を負った。警察の調査が終わり、車が引き上げられて行き、私は家路についた。原因は友人のちょっとした運転ミスだった。運転ミスの瞬間が事故の瞬間
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