少し早い月のように/草野春心
伴奏のない音楽をきいていた
たぶん
心のなかで
夕暮れの時間が
まぢかにせまっていたあのとき
ひとりでブランコに座っているきみをみつけた
しりたいことはいつも
当たりまえのことだけなのに
当たりまえのことだけがぼくにはわからなかった
西風が柳の葉を揺らしていった
足もとの砂がまたその模様を変えた
かなしいのに、
かなしいという言葉では
きみのくちびるを動かすことができない
きりんのかたちをした遊具に 誰も座っていない
少し早い月のように とても冷たそうな きみの頬
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