鏡の世界で/まーつん
 
我の裂け目から

 こっそりと
 漏れてくる

 人は、
 その鏡から
 自由にはなれない
 毎日、毎瞬、己の前に
 かざし続けている

 そして
 絶望の黒い花が
 脳裏に芽生え始める頃

 あなたの心は
 一枚、一枚
 衣を脱ぎ捨てていく

 優しさを装う
 憐れみ

 恐れを隠す
 敵意

 己を大きく
 見せる為の鎧を
 一つ、また一つと、
 脱ぎ捨てる度に

 あなたは
 より小さく
 より強く、輝く

 井戸の底に揺れる
 星明りのように



 ある
 気怠い昼下がりに
 裸で、鏡の前に立ち
 涙が一
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