透明な死人のために/草野春心
 
そうと思った



  あなたは膝に落ちた雑誌をそっと拾い上げ
  緑に照らされたダッシュボードに 元通りに置き直す
  それから勝手にボタンを押して窓を開け
  冬の冷気をたっぷりと招き込んだ後
  再びボタンを押して窓を閉める
  透明な死人たちのために
  ひょっとすると、とわたしは思う
  あなたはもう死んでいるのかもしれない
  あなたかわたしの どちらか ひとりだけが



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