秋のすみれの走馬灯/
もっぷ
か痣が残らない日日となった
彼女のからだが常冬をなぜ選んだのか
老婆となって持ち物は菫色の裁縫箱
少女の頃に着たかった夏の浴衣を
今夜も彼女は縫っている
秋の残り香を封じ込めるかのように
ひと針ひと針丁寧に
花火をみるんです/優しい母さんと
生まれたのは春でした
原風景は秋でした
心はいつも冬でした
夏のにぎわい知りません
すみれの咲く秋がある
すみれが好きなわたしのために
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