古い人/葉leaf
古い人よ
あなたの残してきた足跡が
時間の湖に一つずつ落ちる音がして
僕はそこに誰にも使われなかった時計の針を見る
新しい村に深く棲み付きながら
あなたの姿は目に見える姿とは別の姿だ
あなたの声はこだまを失って久しい
声には代わりに美しい義務ばかりが返された
権利を自分の手になじむように削って用いていた
古い人よ
どんな微風にでも新しくとがった権利が乗って来て
あなたのまなざしはそれを消化するには繊細すぎる
人との多色の交わりが幾筋もつながっていく中で
あなたの生の表現はその筆触を落ち着かせ
それと同時に柔らかい繊細さを増して行った
僕は新しくも古くもなく
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