百年の鳥/はるな
 

あなたはそれから日記を書かなくなって、たぶん唇はかわいている。
テレビは消音のまま点けっぱなしになっているから、部屋のなかの光と音のバランスは悪い。視覚的な喧噪と、それを拒否する沈黙。でもカーテンはわずかに揺れている、窓は開いていない。壁に、美術の教科書から切り抜かれた絵がセロハンテープで貼られている。金箔と、抱擁と死と花。

祈るようにわたしは、わたしの安寧を考えます。だれかの、はわからなかった。たとえばひこうき雲に群れる烏。春の突風。犬のあくび。そういったものたちが、わたしにはとても必然に思えるとしても、それら自身はどこかへ逃げ出したいかもしれない。立ち尽くしてしまうわたしには、不可
[次のページ]
戻る   Point(11)