栗拾い/草野春心
小学生が輪になって栗拾いをしている
裸になった枯れ木の足もとに 赤と黒のランドセルを抛って
わたしはコートの内ポケットから名刺入れを手にとって
なんだか ひどくかなしい気持ちになった
今にも腐って崩れてしまいそうな東屋
誰かが忘れていった 骨の折れた傘
温い日溜まりが膝のあたりに
淀みのような眠気をしたたらせている
ずっと前に死んだはずのものたちが 風に巻き集められ
重なり合ったり離れたりを繰り返している
おそらく わたしではないなにかを この場所は待っている
それは すぐには 見つかりそうもないけれど
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