栗拾い/草野春心
 


  小学生が輪になって栗拾いをしている
  裸になった枯れ木の足もとに 赤と黒のランドセルを抛って
  わたしはコートの内ポケットから名刺入れを手にとって
  なんだか ひどくかなしい気持ちになった
  今にも腐って崩れてしまいそうな東屋
  誰かが忘れていった 骨の折れた傘 



  温い日溜まりが膝のあたりに
  淀みのような眠気をしたたらせている
  ずっと前に死んだはずのものたちが 風に巻き集められ
  重なり合ったり離れたりを繰り返している
  おそらく わたしではないなにかを この場所は待っている
  それは すぐには 見つかりそうもないけれど


戻る   Point(4)