身辺雑記より(九)/たもつ
 


待ち合わせの時間まで
僕は地下街の書店で時間を潰すことにした
詩集のコーナーで数少ない詩集を二、三冊めくってみたが
どれもこれもピンとこなくて他のコーナーにある書籍も
黙りこくったまま何も僕に語りかけようとはしない
仕方なく三軒先の玩具屋で手品の小道具を千五百円出して買った
スタバの一番奥の席で早速箱を開けてみる
鍵がコインを貫通するそのトリックは実に巧妙にできていて
しかも仕掛けはいたってシンプルだ
一見複雑そうな世の中の仕組み等は所詮この程度なのかもしれない
数回練習するとコツをつかみ待ち合わせの改札口で
後からやって来た君に披露すると君は千五百円なりの驚き方をし
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