夜を待っている/栗山透
夜が朝日に殺されていく
彼女は悲しさを手放したりしない
夜が終わって朝がくることを
毎朝しっかりと悲しむのだ
彼女は毛布にくるまって
テレビの天気予報を見ている
(きょうはおひるまでは不安定な天候です)
なるほど、
いま降っていなければ
傘を持つ必要はない
彼女は起きあがりカーテンと窓を
それぞれ15センチずつ開ける
夜の空気がもれないように
朝日が部屋を埋め尽くさないように
わずかな隙間からさす風はつめたく
空気はしっとりと濡れていた
降っていないが空は怪しげな灰色だ
「降るかな」
彼女は15センチの隙間から世界を眺めた
仕事へ出
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