わだつみの木/アオゾラ誤爆
ぎない黄みがかったグリーンの葉は丸みを帯びていて、とても柔らかそうに見える。そしてなぜか、あたり一面真っ暗だと言うのに、この木だけは不自然にかがやいていた。よく見ると、ところどころについている赤い花が、光っているようだった。
旅人はまたしても優しい気持ちになった。いつのまにか波はやんでいる。旅人はこの木のもとに留まれることを心の底から祝った。そして彼は毛布にくるまり、本を読みはじめた。必要なぶんだけの光を、木は照らしている。古びたページをめくりながら、ときどきチョコレートをかじり、ウィスキーを舐める。幸福な時間だった。時計は持っていないが、夜はこのままずっと続くのだろうと思われた。
しかし
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