歴史書/草野春心
 


  ビールジョッキをあしらった看板から
  たっぷりとした影が道に溢(こぼ)れていた
  旅の荷をおろした無口な男は
  これから何処まで往くのだろうか
  それは 知りようもない
  女たちは 遠慮のない高い声で話しながら
  辺りに影を撒き散らしている
  歴史書の胡散臭い挿絵のように
  大仰な手振りをまじえて



[グループ]
戻る   Point(4)