光たち、影たち/草野春心
 


  夕暮れのなかで 光たちは話をしていた
  かつて朝日だったとき じぶんがどんな色をしていたか
  藍色の 円い 夜のうちのひとつになって
  薄暗くとけていくことへの 微かな畏れについて
  夕暮れのなかで けれども 影たちはしずかだった
  ただ、うつむきながら椅子に腰かけ
  卓上に置かれた古い本の 頁を開いては
  そこに書かれている文字を うつろな眼でなぞっていた
  光たちの話す言葉は
  そのしずけさのなかで
  しだいに かたちをうしなっていった



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