ない日記の感想/渡邉建志
 
彼女が日記を閉じるということを知ったとき、わたしはロンドンにいた。初めて彼女の日記を読んだときに、いったいぜんたいどこにいる人なのかわからない日記で、それは遠い国にいらっしゃることだけはわかったので、きっとわたしと線が交わることがないだろう、と思っていた。それはわたしがまだ大学に通っていた時のことだった。それからずいぶんたってわたしはロンドンにいた。ページを閉じるけれど、連絡があれば私信をください、と書いてあって、わたしはそれまでずっとおそれていたのだけれど、メールを送った。送る前に、彼女が書いた日記を一番最初から読みなおした。寒くて暗いロンドンのフラットの階段で、無線LANが隣のPUBから入って
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