「涙はポケットの中で揺れて」/
宇野康平
青空の下、車椅子は上下に揺れて、脳みそ詰まった頭は
洗濯機に入れられ、染色体はゆれる。
吹きさらしのガードレールは錆びついて、旧式の信号機
は煙を出して壊れた。
顔は放置された人形のように崩れ、固まった表情は話し
かけられて、やっと、ひとつ小さな光りを戻す。
年老いて、記憶が先端から無くなれば子の名もでない。
よって、血も涙もでない。
《劣の足掻きより:
http://mi-ni-ma-lism.seesaa.net/
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