五輪−姉弟おしまい/……とある蛙
今さら遅いと思います。
最後の話は
富ヶ谷の空
まぁるく描かれた
ジェットの雲
五色の輪のことでした
その話をした刹那
一〇歳の僕は
テレビから飛び出して
庭に駆け下り
空を見上げていました。
まじめに
もう五〇年も前のことなのですが
見上げる空に
ハッキリと
五輪の輪が見えています。
ねぇさん
一二歳のあなたは
あのとき自分が何になろう
と思っていたのですか?
七人家族全員で
テレビを見ていましたね。
あなたがいなくなって
もう
兄さんと私だけです。
あなた
少し身体が弱かった
腎臓が悪かった と
覚えています
でも
本当はどんな人生を
送りたかったのですか?
最後、年明け正月には会おうねと
約束しました。
でも
それっきりです。
でもそれっきりです。
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