「なにもない夏」/宇野康平
 
るほど震えている。

悪の点々は私にいやな妄想をさせる。土の中に残った根っこが、いく
つか地上から顔を出している。頭の血流が脈打ち、頭部全体で古いア
フリカ大陸の打楽器のように響いた。根っこは潰された人間の手で、
細かい石ころは顔に見えた。吐き気よりも均一な恐怖がある。
かつて、公園の中心に立っていた木によって影落ちていた場所に祖母
はたって、夕日の陽光を浴びていた。僅かながら、先ほどよりも前傾
した腰に私は安堵しながら公園を後にした。


《劣の足掻きより:http://mi-ni-ma-lism.seesaa.net/

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