日記買う/八布
ある冬晴れの日のその空と
同じ色の表紙をした
日記を買った
他に種類はたくさんあったのだが
それはひときわ僕の目を惹いて
一度手に取り
一度戻して
もう一度手に取り買ったのだった
かばんに日記の重みが加わると
書きたいことが次から次へと
わき出してきて止まらなかった
冬晴れの日の街なみに
いくつもの物語が見え隠れした
この世の営みのすべてを
言葉に変えてしまいたいと思うことは
もしかしてとても
野蛮なことではないだろうか?
そんな気もするけれど
過ぎ去っていく大きな流れに
少しでも傷をつけたくて
歌で言葉でストーリーで
人は自分の夢を残していく
家に帰って
新しい日記を開いてみると
罫線の道がまっすぐに伸びていた
僕は
まっしろな頁の地平を
どこまでも歩いていく
自分の姿を見たような気がした
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