風邪と悪夢/ただのみきや
びかかっても
小さい頃と同じようにしか注意しない
おれはいいかげん頭にきてその馬鹿野郎の首根っこをつかみ
怒鳴りつけた
「おれは風邪をひいて具合が悪いんだよ! 」
日頃の我慢が一挙に爆発して
「おれは本当はおまえのことなんか大っ嫌いなんだよ! 」
こうして泣かせてやった
すると妻から電話があり
「その子の母親が怒り狂って捜している。
あなたが息子を拉致したと警察に通報したみたい」
つくづく面倒くさい連中だった
おれはその子から離れて一階へ行った
すると陽の当たらない暗い廊下の奥の方から讃美歌が流れてきた
どっかの教会が間借りしているのだろう
ふと覗いてみようかと思った
だがおれは風邪を治すために眠らなければいけない
余計なことは何もしたくない
パトカーのサイレンが聞こえてきた
目覚めていても夢の中でも
それだけは変わらない
言葉の標本にしてしまえば悪夢なんて所詮この程度
だけど風邪は本当に嫌な奴なのだ
《風邪と悪夢:2013年11月24日》
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