風邪と悪夢/ただのみきや
 
風邪をひいて一日寝ている
よくもこんなに眠れるものだ
寝ては目覚めてまた夢を見る
夢で野垂れ死にしても不思議ではない
見知らぬ旅館に隠れている
ドアが開いたかと思うと風呂上りの子どもが転がり倒れ
その向こうでこれまた湯気を立て立て全裸の父親が言う
「ここで寝ればいいのか」
ここはおれの部屋だからだめだと断る
すると部屋に六組もの布団が敷かれていて
それぞれの布団がもぞもぞと動き出す
一つの布団からは猫の鳴声がする
布団にもぐったままこっちに近づいてくる
他の布団からは人の囁き声がする
突然盛り上がったかと思うと
一つの布団の中から全身真っ黒で目のない男が飛び出した

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