かなしめ十円/
 


 やがて堪えきれなくなって、場所を求めて彷徨し始めることにした。立ち退きを余儀なくされたのだ。河岸の沿いを進む。うららかな午後の、ちいさい淀みを掻き分けながら、光に透けている、光そのものであったという誤診を身に付けて。土気、に含まれるあまたの微生物によって侵食された衣装は風と同じように吹いた後に記憶として留められていく・冬の寒さは鈍い鉄の、なめらかな、その、造形から、なる、傷み。
 何ものも。声をあわせている。寒空に建設機械の轟音が渡る。すべて溶けたあと、砂利で節々を汚された雪の残ったのが、河へ流れていく。工場の排水と、生活排水と、かれの放った精液、こどもの唾、それらの切れ端。工場の休
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