冬/葉leaf
 


ありがとう
過去へ照り返す言葉だが
同時に現在からリズムをつないでいく言葉でもある
この原野に幾つもの植生が交替していく間
地図のない遠い行路を本能だけで突っ走っていった
あなたの内側のあなたから届いた
その言葉の縁々から射してくるものへ
ありがとう
私という容器には大きさもないし形もないので
何者にもなれないし何かと符合することもない
だがあなたはその容器を一つの大地に変えた
注がれるものを待つのではなく
自ら多様なものを育んでいく大地へと
私とあなたはいつでも平行だったし
決して交わらない歴史を抱えていたが
時間と空間が消え失せる位相で無限に混じり合っている
だからこそこんなにも遠くでまなざしだけは強く
去ることと閉ざすことだけが誠実さで
ともに落葉と降雪に思いを預けている
こんなにも寒い冬を届けてくれてありがとう
無数にある亀裂を届けてくれてありがとう
私の秘密は寒さが固めてくれるし
亀裂からのぞく生命は私の枢軸を伸ばしてくれる
ありがとう
この言葉が冬の大気に耐え続けますように

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