笹舟の行方/かんな
などと心配を巡らすと
目の前の景色が微かに歪む
生きたいと願うと
こころの中に欲の居場所が
ほとんどを占め
わたしは弱く泣いてしまう
窓際に小鳥がとまり
透明な硝子をこつこつと叩いている
猫は足元でびくつき
傍らから離れようとした
恐れは本能で
居場所を失わせる
立ち向かうものもあるだろう
隣り合わせで寝息を立て
幸せそうに眠るきみの髪を撫でる
愛などわからない
そんなものはことばの上に
存在するだけだと叫んでいた頃を
未だ懐かしく想う
わかる気がする
眠ることも食べることも性欲も
はてしない
しかし愛にも果てはなく
揺るぎなく穏やかに流れていくのだ
笹舟のように
滑らかな川に身をゆだね
広大な海へと拡がっていく
そうやって
わたしときみは還るのだ
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