ひとつ しずけさ/木立 悟
朝の隅の
見えない朝
埃は歪み
渦を描き
金と緑の河を浮かべる
二重三重にひらく空へ
暗がりは流れ落ちてゆく
樹があり また樹があり
むこうには何も無いかのように
生い茂る
笛の終わりに
冬は傾く
吹雪に立つ街
影の無い街
偽りの景色の絵から
水はこぼれ落ちてゆく
思い出は
更地になってゆく
手に入れようとすると失くなるもの
知らぬ間に双つになっているもの
数は忘れ
数は踊る
棄てられた街 新たな森
新たな冬の 波の静けさ
片目のなかの 渦は金緑
曇間の青の描く音を追う
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