あのね/鵜飼千代子
「これはね」
「むむ」
「ちょっとかっこつけた」
なんて、
いつか答えあわせが出来るといいね
「食べる?」って言われた
「食べて」ってねだった
ひとつだけ来たデザートは
半分にしてって言ったのに
へんな半分に切り分けられた
ので、ふたりで笑った
レジで、お会計を間違えられて
大丈夫だったんだけれど
その後の深刻な表情、
なんでかなって気になっている
エスカレーターの後ろの段で
白髪を発掘した
「表に出しとこ」と言って
「そっちかい」と笑われた
元祖「お兄ちゃんだと思って」の人
思い出を焼き直したよ
それぞれの住みかに帰る駅の地下道で
わたしが差し出した手を
ぎゅっと握った
「ダメだったわけじゃない」と
昔のふたりにナパージュかけて
今日の仕事に帰っていく
ありがとう
逢えて良かった
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