ベビーベッド/ayano
 



スープ付きの秋はとうに横切って 手にしたスプーンの冷たさに思わず手を離してしまった


ありふれた夏、紺色に吐き出された雲のなかでバスに押し込まれた午前七時 見上げる彼女の表情は水色 結露した指切りの音は涼しくレモン色で 首元に注がれる視線のせいで焦がされてしまいそうだった 狙いを定めて堪えるように凝視する空はひたすらに濃厚で はじきだされた空気から眼球に水圧がかかったようだった


跳ねる 魚のように 冷えたスプーン 午前五時のことだ 確信していた 同時にうなだれていた 目の前にあるのは調理された彼女 なのだろう 足元には水 が流れている 例によって嵩が増したのが不本意だ
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