うつくしくみずみずしいリンゴだったので/bookofheaven
 
うつくしくみずみずしいリンゴだったので
これはおいしいはずだと
あなたが言ったので
本当を知るわたしは ずっと胸をおさえていた

太陽のひざしをめいっぱいあびたような
そんなうつくしいリンゴだったので
みずに濡れた白い手が
みずに濡れたナイフで
するする するする 白い実をさらしても
かんがえもしなかった あなた

やわらかい種の周囲の
ほんの少しの茶色のシミ
眉をひそめてそぎ落としたのは
無邪気においしいはずだといったあなた

うつくしくみずみずしいリンゴだったので
これはおいしいはずだと
あなたが言ったので
わたしは言わなかった
本当はそのリンゴは遠い
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