8/きるぷ
 
むかし、
最初の言葉が毀れたとき
つまりひとりの身におとずれるさまざまな死の
最初の一日に触れたときに
その裂け目から吹く風を迎えすぎたのだろうか

あるいはまだ
ふさがっていなかったのだろうか

あの子のくちびるに
なりそこねた言葉か
あるいは堕落したひかりが
落下したあのときは

沈黙と沈黙のあいだを
飛び石でも踏むようにして進むぼくは
笑われでもしたような気分だった
リズムの取り方が下手だと言って



迂回せず
先からわかりきった方角に向けて
軽やかに歩みだし消えていった
そのしなやかな指先は
帰り道を確認しない潔さをもっていた

時々思い出す
あの子のことを

静かな夏の日に見た
木陰の
積極的に実体性を主張する
深い影の印象とともに

むかし
最初の言葉が毀れたとき
聞いたのかもしれない風の音とともに
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