「かわり」/宇野康平
 
、懐中電灯の明かりを頼りに街も、畑も、店も、家も
工場も、学校も存在しない地図の空白を歩いている。
寂しいとは思わなかったのは数えきれないほどの星を眺
めることができたからだと思う。ただ、埋めようのない
空白なぞる感触が心臓あたりを漂う。それは涙を誘うも
のとは違う。

ふと、どこを目指していたのか、思い出した。それは恐
らく偶然で、時間はたくさんかかったが、思い出した。


《劣の足掻きより:http://mi-ni-ma-lism.seesaa.net/
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