おんなが笑っている/HAL
 
の芳香がした

その見知らぬ花の匂いのする抱擁のなかで
ぼくの60兆の細胞はおんなの60兆の細胞と
溶けながらひとつになろうとしていた
その初めて憶える感覚のなかで
強い睡魔がぼくに襲いかかってきた

瞼をあけていられなかった
遠のいていく意識を感じながら
ぼくはやっと気がついた

おんなは紛れもなく
ぼくのための棺だった
ぼくの溶けかかった瞳孔は視ていた

おんなが笑っている

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