ひとつ 結晶/木立 悟
夜の荒れ野
肉厚の双葉
祈りに閉じる
滴の手のひら
瀧が桜に覆われ
音しか聞こえない
やがてすべてが
流れの先に遠のいてゆく
舗装路の亀裂に
沈みゆく鉛筆
遠去かる空に
刻まれた文字
息と夜の
はざまの銀河
三つの森に浮かぶむらさき
何も映らない鏡のむらさき
荒れ地に昇る陽
腕ひらくひと
裏口の扉の隙間から
翠と鉛の庭はそよぐ
光の下で 雪は育つ
聞こえない水音の
かたちだけが振動し
ただそばに居る
そばに居る手のひら
幻と街
冬と鏡像
暮れと継ぎめ
門と響き
別の
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