窓、窓ガラス、そして外/はるな
あなたの夜が空を飛んでいる。平らかなあなたにふさわしい藍色のなかをひかりの流れるように。ねそべるかたちに匂いが残り、重みが残り、この部屋には、あなた以外の何もかもがある。
何がここにあっただろう。カーテン、絨毯、窓ガラス、壁、壁紙、スリッパ、週刊誌、新聞、新聞たて、ボールペン、枕、シーツ、シーツカバー、枕カバー髪の毛文庫本爪みがき靴べら靴みがき靴を履いて、扉を開けて。いったい何がここになかっただろう。体のなかにはなにが入っていただろう。あなたが入ってきたときにそこになにが入っていたんだろう。
わたしはもう言葉を捨て、からだをできるだけ清潔にして、髪も梳いて膝をそろえる。わたし、窓、窓ガラス、そして外。
もうこれ以上どこへも行けない、こんなに遠くまで来てしまったのだから、でもここがどこなのかわからない、わからないところへいてはいけない、もっと遠くまで行かなければならない。どこへも行けないのだとしても、多くの人々がそうしたように、この窓、あるいは扉へ触れて、開けなければならない。でも、どうやってそれをしたらよいのかがわからないのです。
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