今なら/桐野ゆき
 
吹き付ける風も
冷たいはずなのに
靡(なび)く髪も
人の話し声さえも

優しかった

周りの全てが
私を包み込んでくれているようだった


あの人の笑顔を思い出して
少し笑った


久しぶりの幸福感と
久しぶりの笑顔を
支えにして


今なら何処までも歩いていける気がした

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