夜ひらく夜/木立 悟
 




雨上がりに鳴く光
凍りはじめた水窓に
夜は夜を増してゆく
指の熱さ
銀をころがし


給水塔なのか
送電塔なのか
遠く水色の光のなか
土に刺さる
やるせなさ


霧を泳ぐ尾
赤に白に泡立ちながら
空気を留めるかたちを見つめる
短く小さく わずかに歪んだ
無数のかたち


貼り付いた光の生々しさ
襞のひとすじひとすじが
火の車輪に降りかかり
煙も否もなく焦がしゆく


閉じると開くは一緒になり
脚の付け根を遊びまわる
花火を手と手に
見え隠れしながら


軸足を宇宙に
鉄の骨に
つまさきで廻り
星は破片に


午後と夕方
双つの扉の前から動けず
鴉と鳩は入り混じる
鉄路を散らし 入り混じる


空から多くの魚が消え
光の羽虫も去ってしまった
夜へ夜へ昇る径
影を浴び さらに昇る径


音と音と音のくちづけ
十の指のうちの二つが裂け
雨を雨に呼びつづけ
夜を十二にひらきつづける























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