4/きるぷ
 
木々の青はかなしい言葉のようだった
葉がつよい風に群れさざめくたびに、
胸の内壁を乱暴にくすぐられるようだった

ぼくはまるで、今日はじまったみたいだった

先触れのない多幸の感覚が、
不穏を湛えたあれやこれやを
とりどりの色をもつリズムにすりかえた

そのようにして五月の公園は、
幾千もの歌にみちていた



ベンチに座って数時間を過ごす

誰かを待っていたようであったのは、
他人の夢がぼくの内面に彫り上げた、
いつわりのない気持ちのせいだった、

そして誰も来なかった



木々の枝が重なって成るいびつな格子、
その格子を浮かび上がらせる日の光、
それらが羽虫と共に宵闇にまぎれようとする頃に

夜目の利くなにものかが
ぼくを遠くから見つめていることをはっきりと自覚して、
ぼくは慄えた
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