大河の後で/yamadahifumi
時の中で立ち止まれば、
ふと、秋の風が吹いている
「お前には何の価値もない」と昔、言われた事がある
だが、価値とは一体何か
今この吹きすさぶ秋風に
一体、どんな「意思」や「価値」があるというのか
・・・全ては大河のように流れ去ってしまえ
国民年金と確定申告を押し流し
ナポレオンとビスマルクの偉業を押し流し
その波間にふいにラファエロとシェイクスピアの偉業をちらと見せつつ
全てはこの秋の風のように、あの大河のように
押し流されてしまえ
今、僕は一人、秋の風の中に立っている
遠い昔、僕は自分の人生を放逐してしまった
崖の上に立って、古い恋人からの手紙を投げ捨てる人のように
そんな風に、僕は僕の人生を断崖から投げ捨ててしまった
・・・だから、全てよ 流れ去ってしまえ
どんな人生の価値も意味も見せる事なく
全ては傍流と亜流に別れて流れ去ってしまえ
そうしてその後に倒木が一本残っただけだとしても
その倒木には多分、人類一つ分の価値が
残っている事だろう
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