手に残された口づけ/番田
僕は見る 自分の手を
だけど この肉体には 誰もいない
指紋をじっと見ていた そして それを さすった
きっとこの手にあの人の肌を探した
それは遠くにあったのかもしれない
空の彼方にある 見えない言葉に 僕は
不思議な小説の中をさまよっていた そして
僕の好きだったはずの 明日で閉店する本屋で
帰る場所のない 不安な思い
寂しい僕には 確かな過去があり
あらゆる人に 奇妙な自分を感じていた
きっと意味などないが それも誤りである気がする
だから 何もかもに 無関心でいたい
そして その女についての悪口や いろいろな
つまらない話に貴重な時間をつぶされても
縁のない話として 無視しよう
もう そこに 何の意味があるのかは
たぶん 忘れてしまった 僕は 家に帰る道で
きっと沢山の詩を書いているんだ きっと
詩なのかな ずいぶん前のできごとを書いた
しかし そろそろ始めたい すでに手遅れだが
手紙を両親に書いている
一体どんな意味が そこにあるのかと また
受験勉強をしては 就職活動だとしている
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